年収1000万 ITフリーランスの随想録

創業以来年商1,000万以上を継続しているITフリーランスの業務体験記や日々思うことの記録

エージェント経由でITコンサルタント案件獲得に役に立ったスキル(前編)

こんにちは。アラフォーITフリーランスです。

 

30代前半で独立して、様々なエージェント*1様々な案件を紹介いただいた経験を持つ筆者が、エージェントを通じた案件獲得で役に立ったと感じたスキルをシェアします。

 

私の場合、ITコンサルタント、SE、プログラマーとして業務を受けることがあるのですが、それぞれにより役にたつスキルは異なりますので、今回はこの中で最も高単価案件となりやすい、ITコンサルタントの案件獲得に関してお話しします。

 

ちなみに私の得意領域は、企業の基幹業務システムのスクラッチ構築で、応募案件もそのような案件が多いです。

  

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これからITコンサルタントとして独立を検討している方、またはITフリーランスとして既に活動中で、ITコンサルタントの案件獲得を新たにお考えの方の参考になればと思います。

 

強みになると考えていたスキル

 

独立当初、エージェントに対して自己アピールする際、自身の強みなると自覚していたスキルとして「実装スキル」「コンサルスキル」「難関資格」がありました。

 

そして独立から5年以上経過してみて、それぞれが実際の案件獲得に役に立ったかという実感についてお話しする流れとさせていただきます。

 

 

実装スキル(コーディングスキル)

 

エージェントから仕事を受けるにあたり、高単価のITコンサルタントの求人を紹介されることが多かったのですが、その際にも、私の実装スキルは強みになるのではと考えていました。

 

『ITコンサルタントとして関与しますが、場合によっては作業者としても動けるので様々な役割に対応できますよ』というセールスポイント(差別化)です。

 

実際に前職のコンサルティングファームでは、ITコンサルタントと呼ばれる職種の方々は実装スキルを持たない方が多かったので、ファーム内でも私の強みと言えました。

 

さてこれが実際に役に立ったかですが、結論。

 

案件によっては歓迎されることはあるが、その割合はあまり多くなかった、という程度の印象です。

 

やはり高単価のコンサルタント求人の場合、プログラミングや設計は業務範囲にそもそも想定されていないことが多かったです。

 

 

コンサルスキル(コンサル実務経験)

 

エージェント経由でITコンサルタントとして案件に入るのに、スキルというより、元大手ファーム出身者という点はかなり有利に働いたと思います

 

国内に限らず有名な大手のITコンサルティングファームなら、年齢や職階が同じコンサルタントに求められる基本的なスキルが似通っているため、例えば30歳前後で数年ファームに所属していた、というだけでどの程度のスキルを持つかがだいたい想像がつきます。

 

ITコンサルタントの案件の場合は、プロジェクトの責任者やメンバーにコンサルティングファームの人間が関わっていることが多く(そもそもコンサルティングファームのプロジェクトが求人しているケースも多い)、例えば「元アクセンチュア出身のマネージャーランクで仕事をしていた人物」という話だけでも、受け入れ側は作業イメージを具体化しやすいです。

 

私はこれまでの社会人経験で、新聞に載るようなプロジェクトのPMなどの大きな成果を残したとか、英語ビジネスレベルであるとか、高学歴など、派手なアピール要素は(悲しいかな)ないですが、元ファーム出身者であるという点が、ITコンサルタント求人に応募できた最大の要因であると推察しています。

 

したがってフリーランスでITコンサルタントとして働きたい場合は、元ファーム出身者でない限り、その前にどこかのファームに入社して数年頑張るというのは現実的な努力だと思います*2

 

 

難関資格ホルダー

 

私はIT業界に限らず幅広くビジネスマンに人気の高い、中小企業診断士の有資格者です。

 

IT実務+ビジネスサイドの難関資格、という組み合わせは、個人的にはセールスポイントになるのではないかと考えたのですが、結論、こちらはほとんど意味を持たなかったという印象です。

 

もしかしたら、前に書いた「コンサルティングファームでの勤務経験」の方に隠れてしまっているかもしれません。

 

しかし実際、私がプロジェクトの求人する側であっても、資格持ちより実務経験者を重視するでしょう。

 

特に弁護士や会計士など、その資格がないと仕事をすることができないというような制約がない限り、(自己啓発系)資格の効果は低いというのが実感です。*3

 

面談などで感心されることはあっても、中小企業診断士を持っているからエンジニア枠でなくコンサル案件にアサインしますね、という話にはまずならないという実感です。

 

 

(まとめ)

 

ITコンサルタントとしてフリーランスの案件を獲得するためには、私のアピールポイントでは「元ファーム出身者」であるということ。という身も蓋もない結論になってしまいました。

 

しかしこれが現実と思います。

 

会社の社員の立場であれば、ストレッチさせるためとか、別のスキルを身につけさせるために、未経験の分野の仕事にあえて挑戦させてくれることもあるでしょう。

 

しかしエージェントはそのようなことはまず考えてくれません。

 

なのでこの経験から、私がこれからITフリーランスを目指す方にお伝えしたいのは、会社員のうちに、独立を見据えてサラリーマンの立場で業務経験を可能な限り積むことです。

 

特に独立して新たな領域で仕事をしたい方は、現職で果たせない場合には転職等を駆使してでも、サラリーマンの立場で独立前の実務経験をアップデートしておくことが有効と思います。

 

 

今回はここまでにします。

 

後編では、自分にはないスキルだが、持っていれば案件獲得にさらに役立ったであろうスキルについてお話ししたいと思います↓

itfreelancer.blog

*1:案件の紹介会社です。求人する企業と、仕事を探すフリーランスの間に立ってマッチング等を行います。フリーランスがコネのない企業に直接営業するのは難しいため、エージェント経由で仕事を得ることはITフリーランスにとって一般的です。エージェントは顧客から支払われる報酬の一部を運営費に充て、残りをフリーランスの報酬として支払うという形でエコシステムの一部を形成しています。

*2:ただし、超短期の在籍は、解雇されたか職務がこなせなかったかと疑われることがあるため、逆にマイナス要因になり得ます

*3:IT業界なら「ITストラテジスト」や「ネットワークスペシャリスト」などの難関資格持ちでも、それが実務での評価面に直結するわけではないというのは理解しやすいと思います。

サラリーマン vs フリーランス 実質の年収比較

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こんにちは。アラフォーITフリーランスです。

 

10年超ITサラリーマンを経験した私が、ITフリーランスに転身して数年して、それぞれの年収を比較する際に考慮しなければならない点をシェアしたいと思います。

 

今後フリーランスを目指す方、または既にフリーランスだが現状の年収がサラリーマンと比較してどうなのかよく分からなくなっている、という方の参考になれば幸いです。

 

5つの観点で順に説明します。

1.(前提)税金
2. 有給休暇
3. 経費
4. 退職金
5.社会保険料

 

1.(前提)税金

 

サラリーマンとフリーランスの年収を比べるにあたって、税金面での考察が良くなされると思います。

 

が、これについては収入の多寡など様々な要因が絡んで一概に説明が難しいので、ここでは考慮外とさせてください。いずれも税金(所得税、住民税等)はかかるので、それはだいたい同じくらい*1と仮定します。

どうしてもまずそこが気になる方は、税理士の方などのブログを参照して下さい^^;

 

ここでは、それ以上にわかりやすく違いの出る要因があるので以降でお話しします。

 

 

2.有給休暇

 

なぜ年収の比較に有給休暇が?と思われた方がいるかもしれません。

 

私の経験上、サラリーマンの時に給料と関連付けて意識していなかったことに有給休暇があります。もちろん有給休暇の残日数、というのは意識していましたが、有給の「給」は給料の「給」です。つまり働かないでも給料をもらえる休日、ということになります(恥ずかしながら、私はフリーランスになった後に漢字の表す意味に気付きました)。

 

私の場合、過去に勤務した3社はすべて、勤続年数に応じて有給日数が増えていく仕組みで、だいたい勤務の終盤では、15日~20日程度、年間で有給休暇を使えていました。

 

もしこれからフリーランスを開始される場合は、たとえば自分のスキルなら月間60万円稼げそうだ、と考えた時に、それを単純に12か月掛けて想定年収720万円、とはしない方が良いです。

なぜならこの計算はサラリーマンなら取れる有給休暇を取らずに働いた場合の年収額となるからです。

 

もし休暇をサラリーマンの時と同様として、例えば年間20日欲しい、とすれば、11か月分(11掛け)で年収を考えなくてはなりません*2

 

何か月稼働できるかという観点では、実際にはサラリーマンだと会社(総務や経理)が担当してくれること、例えば契約書作成、会計システム入力、確定申告(や税務署に出向いての納税)などを自身で行うことを考慮しなければなりません。

 

これらクライアントサービス以外の業務を自身で平日に行うことも想定すると、上記有給に相当する休暇取得分も含めて、実際の報酬が発生する仕事に就けるのは年間のうち10か月くらいで想定しておいた方が良いと思います*3

 

 

3.経費

 

業務で使用するパソコンや高速インターネット環境、プリンタなどはすぐ思いつくでしょう。

その他事務所費用(シェアオフィス、コワーキングオフィス費用)、税理士費用(個人事業の場合は必須ではないです)、SaaS費用(DROPBOX、Charwork、ZOOMなど)、印刷コスト、スキルアップ費用(研修参加等)、があります。

 

私の場合だと、だいたいこれらの経費は売上の5%以下です*4

 

経費に関しては、フリーランスになると話は尽きませんので、それらは別の記事でまたお話ししたいと思います。

 

とりあえず売上に対して余裕見て1割見込んでおけばITフリーランスの場合大丈夫だ、と考えてもらったらよいと思います。

 

 

4.退職金

 

フリーランスに退職金は当然ありません*5

例えば、今勤めている会社の定年時退職金を2,000万円と仮定し、35歳でフリーランスを開始する場合、80万円×25年(定年60歳を仮定)、自身で積み立てていく必要があります。つまり25年間はサラリーマンより80万円余分に収入を得なければなりません

 

 

5.社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)

 

これに関しては1人法人を立ち上げる方の注意事項です。

社会保険料は、半分が会社負担ということを知っているでしょうか。

 

私は法人化してから、このありがたみをようやく実感としてわかるようになりました。

 

たとえば、1人法人で、自分の給料を月額50万円とした場合(つまり年収600万円)、社会保険料は、月額15万円も支払うことになります(東京の場合。正確には140,850円です。下リンクの等級30の欄を参照してください)。

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r2/ippan_3/r20913tokyo.pdf

年収600万円に対して、社会保険料がざっくり180万円です。すごいです。

 

そんなに社会保険払ってるのか?と思われたサラリーマンの方。

社会保険料は労使折半なので、会社員は510万を受け取り(いわゆる手取り額)、会社は別に90万を(陰で)納付してくれています

 

ここで、1人会社の社長の場合、会社の支払いとは、結局は自分で払っているのと同様になるので、サラリーマンの倍額の保険料を支払うことになります。

 

したがって、今サラリーマンとして額面年収600万円であれば、一人会社の社長として同じ収入を得るためには、(社会保険料だけを考慮しても)690万円売上なくてはならないということになります。

 

将来受け取れる厚生年金は同じ額なんですけどね・・・

 

個人事業だと、そもそも厚生年金の加入はしないため、フリーランスだからといってこのように多額の保険料を支払う必要はないのですが、将来厚生年金は受け取れなくなります(当然、サラリーマンの時に納付した分の年金は受け取れます)。

 

これも長くなりそうなので、またどこかでもう少し詳しくどこかで別の記事にしたいと思います。

 

 

(まとめ)

 

また長文となってしまいましたが、これまでの参考例(年商1,000万円/35歳独立/退職金相当2,000万円蓄財/社会保険加入)を合わせると

・経費でだいたい売上の1割(100万円)

・退職金のため80万円/年をプールする

社会保険料で90万円納付が必要(社長の報酬を年額600万円に設定した場合)

となり、サラリーマンの額面の年収なら700万円程度に相当するイメージになります。

 

今サラリーマンで700万稼いでいるなら、フリーで法人設立した場合には売上1,000万円必要。そのためには、月額100万円の売上が必要(2.の点から)という感じでしょうか。

 

フリーランスにこれからなる方の参考になればと思います。

*1:実際に1,000万円くらいまでの年収であれば、あまり違いを感じない、というのもあります。フリーランスはサラリーマンのように税金の給与天引きがないので、現金で納付した場合に、たくさん払っているという錯覚を起こす方が多いのは理解できますが。。。

*2:フリーランスは1か月の労働を20日とか160時間とかで考えることが多いです。

*3:これからフリーランスを目指す方の年収見込みという意味だと、そもそも年間10か月分の仕事が受注できるという前提の方をより慎重に検討する必要があるかもしれませんね。

*4:私は税理士を使っていないし、格安の住所利用のみのバーチャルオフィスを使っているので、固定費は安い方だと思います。

*5:各種共済会などが実施している退職金制度はありますので、それを利用しなければ、ということです。いずれにせよ退職金に関する考え方はサラリーマンと違い、自分の売上から能動的に積み立てていくという感覚になります。

サラリーマンからフリーランスになって変わったこと ~ 時間の捉え方

こんにちは。アラフォーITフリーランスです。

 

10年超のサラリーマン経験を経て、フリーランスになってから気持ちの上で変化したことについてお話ししたいと思います。

 

いくつか思いつくことがあるのですが、今回は時間に対する捉え方について取り上げたいと思います。

 

フリーランスは時間をお金に換える存在

 

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フリーランスになってから、時間に対して「もったいない」という感情が、サラリーマンのときより大きくなったように思います。

 

なぜなら、時間を無駄にするということは、その時間働いていれば得られたお金を失うことに繋がるからです。

 

それはサラリーマンも同じ、と考えるかもしれませんが、(社員を持たない)フリーランスは、単価を変えられない限り、稼働時間が収入を決定する唯一のパラメータとなるため、圧倒的に稼働時間が重要となります。

 

特に自宅作業など、作業時間を融通できる働き方の場合は、四六時中、この時間を業務に費やせば生み出せるお金があるのに、という考えがどこかにあります。

 

したがって私と同じように世間が休日でもどこかで仕事をしている、というフリーランスが多いのではないかと思っています。

 

 

それは仕事に追われているというより、お金に換えられる空き時間があればもったいないから仕事をしよう、という感じです。

 

 

時間の捉え方が変わって起きた行動の変化

 

そうは言ってもフリーランスになったからと言って、なかなか日々の時間の過ごし方は変えることができていません。

 

ただ、無意識に行うようになったのは、休日でも空き時間は仕事をすることとか、朝食前の時間帯を仕事にあてるようになったこと、机がなくても移動中にできるアイデア出しなどのタスクをToDoにして取っておくなど、効率を高めるための行動を自然に行うようになりました。

 

ある意味プライベートと仕事の境界が曖昧になってきており、個人的には、それはそれで様々な工夫ができ、むしろ日々が楽しくなったように思っています。

 

意識的には、2点あります。

 

ひとつは、会食の2次会の参加をやめました。

私の経験上では、2次会以降では1次会と同じような話をダラダラしてしまい、コミュニケーションの生産性がとても低いと感じています。翌日に影響してしまったり、飲みすぎて失言してしまったりというリスクもあります。

なので、独立してから2次会に参加したことはほとんどありません

 

もうひとつは、時間にルーズな人を許さなくなりました。

端的に言うと遅刻する人ですが、仕事上はほとんどそういう方はいないのですが、プライベートで、ごく数人、そういう友人がいました。

「私の30分、5000円返せ」と思ってしまうので、距離を取るようにしています。

 

ただ時間にルーズでも、相手が自分より社会的立場が上(≒稼いでいる)場合は、許せてしまいます。なぜなら私が失った時間(お金)よりも相手の時間の方が価値があるからです。

 

そう考えると、距離を取るようになった友人に対しては、社会的立場として優位であるという感情があったのかもしれませんね・・・

 

 

余談

 

私は時間効率を高めるために、休日でも稼働するという契約を喜んでお受けしています。

 

以前あるサービス業の支援をしたときは、水曜と日曜がお客様の定休日でした。

 

それは私にとっては大変なメリットです。

なぜなら、土曜に稼働できるうえ、貴重な平日の水曜日を他の顧客の仕事にあてることができるからです。

 

土曜も働いていただいて、とお客様は少し遠慮していたようですが、私にとっては稼働率を高めることができる大変ありがたいお仕事でした。

 

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今回はこんなところです。

フリーランスになって変わったことについては、また別の観点でお話ししたいと思います。

 

ITフリーランスとしての初仕事は小規模基幹システムのひとり開発だった(後編) ~ 業務内容と報酬

こんにちは。アラフォーITフリーランスです。

 

今回は前回に引き続き、私のITフリーランスとしての初仕事についてお話ししたいと思います。 itfreelancer.blog

 

前回は 1.受注の経緯 についてお話ししました。

今回は 2.業務内容 と 3.報酬 についてお話しします。

 

2.業務内容

 

顧客は小規模製造業(以下B社としましょう)で、自社の受注~製造~出荷までの業務のIT化を望んでいました。

 

A氏やB社にはIT構築の技術に疎いため、テクノロジー選定は私の自由でした。そこで開発技術は私の最も得意なASP.NETを採用し、BCPを考慮してクラウド(Azure)に構築することにしました。

 

クラウドを使用するメリットは、顧客にとってのBCP以外にもあります。

それは私のようなフリーランスにとって、インフラの構築や維持にかかる手数を削減できることや、サイジングのリスクを回避できる*1(スペックが足りなくなったら、手軽にアップできる)などがありました。

 

技術が決定したら、B社でシステム担当に指名されたCさんと私で業務要件定義の開始です。

 

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私が現状業務の業務フローを作成し、それに関してCさんからのフィードバックを受ける、ということを1か月程度行い、次はITを導入した場合の業務フロー案(To-Be業務フロー)を私で作成し、それをもとにCさんに説明し、またフィードバックを得て調整する、という作業をまた1か月程度行いました。

 

このTo-Be業務フロー作成は特に楽しい仕事であったことを覚えています。B社にはIT導入後の具体的イメージがほとんどなかったため、私から提案する内容をどんどん取り入れていただけたのです。このことはとてもやりがいを感じました。

 

もともとB社の社長は、自社の業務が特殊であると思っており、システム化が難しいと考えていたようですが(実際に、私より前にこの案件を受けた個人事業主の方がおり、一度とん挫した経験があったようでした)、スクラッチでの構築であれば、要件を論理的に整理しさえすれば如何様にも実装できるので、設計・実装にあたり特に問題となることはありませんでした。

 

また、このような小規模システム開発においては、どうしても大規模ウォーターフォールのような、成果物の作成とそれに基づいた合意形成が予算的に難しくなります。

その点はコンサル時代に養った合意形成のスキルや、プログラマー時代に養った実装スキルを最大限活用できて、スピード感のある実装とローリスクの合意形成を両立できた実感はありました。

 

そして要件定義を開始して6か月程度で、さしたる問題なくシステムは完成しました。

 

3.報酬

 

今回の仕事で報酬について実感したことが2つありました。

 

(1) 請負契約における報酬請求権

 

法律の話になってしまいますが、基本的にシステムを構築して納品するような作業は請負契約となる場合が多く、この場合、報酬が入金されるのは、システムが完成して、顧客が検収を完了した(顧客がシステムの出来栄えをOKとした)とき*2です。

したがって、請負契約の場合の請負側のシステム完成に対するプレッシャーは強いです。なぜならお客様にOKと言わせなければ、報酬を受け取れないのですから。*3

もし、そこで揉めれば(どうしても払わないと言われれば)、裁判に訴えるしかありません。*4

 

私は、独立して最初の仕事で上記のリスクを抱えることが心理的負荷を高めると考えたため、私はA氏を盾に、私とA氏の間で準委任契約(毎月私はA氏に作業代を請求できる)とすることでリスクを回避しました。*5

この行動は我ながら最初の仕事としてはうまく立ち回ったと思います。

 

(2) 実装スキルを持つ強み

 

つくづく芸は身を助けるではないですが、デリバリー能力を維持していてよかったと思いました。

 なぜなら、顧客から得た報酬のうち、結果的にA氏と私の配分は1:9となったからです。

 

たしかにA氏は案件開始後は何もしていませんが、この案件を発掘するまでに相応のコストをかけているはずです。

 

そう考えると、顧客が払う報酬の大部分を手にできるのは、実装スキルを持つ者(実作業を行うもの)の大きな強み*6であると意を強くしたのを覚えています。

 

*1:選定したサーバーに問題があれば、弁償は(普通に考えて)自分持ちになる。これはフリーランスにとって大きなリスクであると考えていたので、クラウド化の流れはフリーランスの追い風だと思ったことを覚えています。

*2:実務では、システムが完成することを前提に、報酬の半額を仕事の開始時点で受け取るような形式も多いです。先にお金をもらっておかないと、システム開発の過程で出ていく人件費等の経費がまかなえないケースがあるからです。

*3:現にA氏が報酬を受け取ったのは、当方がB社にシステムを納品したときでした。

*4:悲しいかなフリーランスは寄って立つ看板がないため、いざとなったら頼れるのは法しかありません。

*5:これはA氏にとっては大変なリスクであったはずで、法律を知らないことこそが大変なリスクを言えます。このあたりの契約周りの留意点については、まだどこかで記事にします。

*6:いわゆるコンサルティングファームがITの分野に進出しているのは、規模の違いはあれど同じ理由であるという点を、独立して実感しています。

ITフリーランスとしての初仕事は小規模基幹システムのひとり開発だった(前編) ~ 受注の経緯

こんにちは。アラフォーITフリーランサーです。

 

今回は少し個人的かつ具体的な話をしたいと思います。

私がITフリーランスとして初めて取り組んだ仕事について、その受注経緯、業務内容、報酬額などの話です。

 

ありふれた事例ではないと思いますが、生の経験を話しますので、独立を模索される方の参考になればと思います。

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 1.受注の経緯

 

(1) まずは「低稼働」案件探し

 

独立して仕事を探す際に、私が最も重視した点があります。

 

それは、”100%稼働の仕事*1は受けない”ということです。

 

ITフリーランスの場合、最近こそ低稼働案件(100%未満の稼働案件)が随分増えてきましたが、私が独立した当初は、ほとんどがフル(100%)稼働の案件*2だったように思います。

 

さてそもそも、なぜ100%稼働の案件を避けたかったかというと、

  • 案件終了時、次の案件を探すまでが無収入になるリスクを抱える
  • 独立したからには様々な仕事や顧客と仕事をすべき(そして、細く長く付き合えてかつ、質の良い顧客を発掘したい)
  • 自社の商材開発や営業を行うのに平日の空き時間は必要
  • 本業のIT以外の士業としての業務も少しずつ経験値を積みたい

などの理由が頭にあったからです。

 

(2) IT営業のフリーランサーに着目

 

前述のように、当時はエージェント(フリーランスに仕事をあっせんする営業会社)のあっせん案件には低稼働案件がとても少なかったため、一通りのアプローチを終えた後は、違ったやり方での案件獲得を考えました。

 

そこでまず浮かんだアイデアが、IT営業を仕事にしているフリーランスにアプローチする、という方法でした。

 

私は独立まで一度も営業職を経験しておらず、そこは独立して仕事をする際のウィークポイントだと思っていました。

 

そうであれば、逆に営業スキルはあるがデリバリー能力を持たないフリーランスと協力関係を結ぶことはできないか?と考えたのです。

 

エージェントのような会社組織に対して私の都合で稼働条件を交渉することは難しいと思いましたが、お互いフリーランスのような立場であれば、柔軟な協力体制という形で条件面の交渉がしやすいと考えたためです。

 

そんな都合の良い出会いはあるのかと、まずはネットで情報収集を始めたのですが、以外にもこの手の方も一定数いることがわかりました。

 

そこで目に留まったあるITコンサルタントの方に直接メールを送り、会っていただけることになったのです。

 

(3) 案件獲得

 

そのITコンサルタントの方(A氏としましょう)は、中小企業向けのITコンサルタントを名乗っていたものの、実際には、IT投資を望む中小企業を見つけてきて、そこに自身の息のかかったベンダーを連れてきて、紹介手数料を取るビジネスを行う、一人社長でした。

 

A氏は私の経歴や資格を見てすぐに協業に前向きのようでした。

 

私が彼と出会ったタイミングで、彼にはちょうど、自社の基幹業務のIT化を検討している小規模企業の伝手がありました。どうやら、数百万程度の予算は取れるとのこと。

 

具体的には、小規模企業の受注~生産~出荷にかかる管理業務をIT化するという仕事でした。

 

まさに私の初めての仕事にはうってつけだと思いました。

なぜなら基幹系業務は業務知識として私の得意分野でしたし、小さい案件ながらプライム*3で動けて、要件定義~開発~運用サポートまで自分一人で対応できる規模感になりそうだったからです。

 

数度のA氏との打合せから、営業畑のA氏にはデリバリー能力はもちろん、プロジェクトマネジメントの経験値もほぼないと見えたため、案件運営に口を出してくることすらできないだろうと確信していました。

 

とはいってもA氏の会社の従業員として顧客に対応するので、形式的に私のプライム案件ではありませんが、そんなことより実質プライム案件の実行による経験値UPの方が重要です。

 

何しろ、独立して最初の仕事で自分の全責任において企業のシステムを構築することができるのですから、今回の契約額が、20代のころサラリーマンエンジニアで初めて責任者としてデリバリーした案件の半額にも満たなくても、今後の経験値として大きな意味を持つだろうと思われました。

 

すぐにA氏と責任範囲・報酬の配分・業務内容等を調整し、契約を交わしました。

 

デリバリー期限は明確ではありませんでしたが、少なくとも半年以上は先の話ということで、それなら週2~3日くらいの労働量*4で十分ひとりで間に合わせられそうです。

 

こうして独立後1か月も経たずに、当面の収入はすんなりと確保*5でき、かつ他の仕事にも対応できる理想的な状態を作ることができたのです。

 

・・・

  

長くなったのでいったんここで一息つきます。

次はこの案件で具体的にどのような業務を行ったかを書きたいと思います↓

itfreelancer.blog

*1:平日の稼働をすべてその仕事に投入すること。一般的には1週40時間で計算するので、50%稼働であれば、週のうち20時間を案件に投入するという約束となる

*2:現在では案件の紹介文に稼働率が示されることが一般的になりましたが、当時は稼働率の表示すらないフル稼働が前提の頃でした

*3:1次受けという意味のIT業界用語で、顧客と直接契約することを指します

*4:自宅でほとんどの業務を行うことができることもあり、在宅フリーランスのイメージに希望を膨らませていたのを思い出します

*5:顧客とA氏は請負契約なので仕事完成時にようやく報酬全額を受け取ることができるのですが、私とA氏は準委任契約としたため、完成前でも私はA氏から定期的に報酬を得ることができたのです。このあたりの契約まわりの知識についてはどこかで別の記事にしたいと思います

ITフリーランスとして独立するためのスキルレベル

こんにちは。

 

今回は、
ITフリーランスとして独立するために、どの程度のスキルレベルを必要とするのか?

という点についてお話ししたいと思います。

 

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まず、一口にITフリーランスといっても、

など、これらは一例で、他にも様々な職種があります。

 

ちなみに、私はこのうち、コンサルタントシステムエンジニアプログラマーとしての仕事が大半ですが、このうち、システムエンジニアをとってみても、Javaや.NET、フロントエンドやバックエンド、アプリやインフラ、など様々な分野に細分化することができます。

 

したがって私の具体例でお話しすると対象の読者が限られてしまうため、ここでは私自身の経験から、広くITフリーランス全般について、独立して仕事をする際に必要なスキルレベルについて考えてみたことをお話しします。

 

(1) 自己解決レベルのスキル

 

フリーランスとして働く場合は、顧客にとっては単価*1に見合ったプロとしての仕事を期待しているわけですので、業務遂行に伴って生じる様々な課題に対して、基本的に自己解決することが前提となります。

 

会社員の場合、周りは「同僚」であり、先輩に教わるなどの協力関係があったり、上司が部下の成長を見込んで少し難しい課題解決を命じる場合もあります。

 

ただし、フリーランスの場合は、このような関係性はありませんので、与えられた業務や課題に関しては、自己解決が十分可能な前提で臨むべきです。

 

自己解決できないほど難しい課題に対応せざるを得ない状況になったら、単価と課題と自身のスキル、いずれかが見合っていない、本来受けるべきでないレベルの仕事をうけてしまっていると考えるべきだと思います。

 

フリーランスとして業務を受ける場合は

  1. 事前面談などを通じて、業務内容や発生し得る課題のレベル感を把握する
  2. 提示単価*2から対処を期待されている課題のレベル感(いわゆる「期待値」)について想定可能である

などの準備が必要です。

 

(2) ”自分でやってダメなら、普通のフリーランスなら皆ダメなはず”と言える程度のスキル

 

とはいっても、やはり業務を行う上で、当初想像していなかった難しい課題に直面する場合があります。

 

そのような場合に、このタイトルのようなスタンスでいられるかが一つの基準になる気がしています。

 

個人的な話ですが、私の場合はいわゆる「控え目」な人間であり、顧客やチームメンバーに対して押し出しが強い方ではなく、顧客が自分をどう評価しているかについて神経を使うタイプの人間です。

 

そんな私が技術的課題に直面した場合に、このタイトルのようなスタンスを保てるかで、その後顧客との信頼関係を維持できるかに影響を及ぼしてきたように感じます。

 

どういうことかというと、"自分がやってダメなら、普通のフリーランスも皆ダメなはず"と思える場合、課題に対応するために

  1. 人員増強を提案する(マンパワーによる課題解決が可能な場合)
  2. もっとスキルの高い(高単価の)人材投入を提案する

などの能動的な提案を自信をもって顧客にしやすくなるためです。

このような自信が持てない場合、難しい課題をひとりで抱え込む状態になりやすいので、これは顧客との関係が悪くなる典型的なパターンのように思います。

 

 (まとめ)

 

結局、(1)と(2)で似たような話になってしまいましたが、そもそもフリーランスで仕事をするために明確に必要な、具体的スキルを見つけることは現実的でないし、単価(期待値)という要因も絡んできます。

 

ITフリーランスを始めるためには、ある一定のスキルが必要、という考え方ではなく、(1)(2)いずれの観点もクリアできる仕事が どの程度市場にあり、どの程度の単価で求められているか、ということが自身のマーケットバリューである という考え方がしっくりくると思います。

*1:ITフリーランスの業界ではこの「単価」という表現をよく使用します。一般的にこれは1か月あたりの報酬金額を指します。概ね「報酬」と置き換えて読んでいただいて大丈夫です。「単金」という表現もたまに聞きます。

*2:私が顧客と事前面談をする場合には、次のような役割を提示して話をすることが多いです。

  • コンサル、または開発プロジェクトのリーダー(調査・管理・調整が中心)
  • システムエンジニア業務(システム設計中心)
  • プログラマー業務(コーディングやテストの実施が中心)

それぞれに3段階の単価(120万,80万,60万)を設定しており、単価交渉がまとまった時点で大枠の役回りに齟齬がないような状態となっています。

 

独立したきっかけと、なぜ独立を選んだか

 

こんにちは。

今日は私が独立したきっかけや、そもそもサラリーマンからなぜ独立を選んだかについてお話ししたいと思います。

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1.独立したきっかけ

 

これは簡単な話なのですが、サラリーマンで最後に勤務した会社を辞めたタイミングだったから、ということになります。

 (要はタイミングをはかる前に、やめちゃったということです^^)

 

当時はまだ副業は一般的でなかったので、ITフリーランスとして働き始めたのは、サラリーマンを辞めて以降です。

 

何も準備していなくても、ITフリーランスなら、仕事のあっせん業者がたくさん存在することは知っていたため、前職のコネなしでも仕事を得ることは可能だろうと考えていました。

 

当時は30台前半でしたので、40手前までにもしどうにもならなかったら、サラリーマンに戻ればよい、と考えていました。国内のIT業界なら、おそらくそれくらいまでは引く手はあるだろうと考えたので、リスクは低いと考えました。

 

2.なぜ独立を選んだか

 

(1)生涯サラリーマンは務まらないと思った

 

毎朝決まった時間に会社に行き、淡々と定年まで勤めるというイメージは、社会人になった当初から描けませんでした。

 

IT企業のサラリーマンとして数社で10年強、特に問題なく勤めていたので、性格的にどうしてもできないというわけではないのですが、中年になって会社に勤めている自分、というイメージが全然描けなかった、という感じです。

 

ちなみに、私の父親は新卒で入った大企業で定年退職まで40年間経理一筋、その他親族や親しい知人にも特に自営業者はいませんでしたが、どういうわけか私はサラリーマンには向かなそうだ、と常々考えていました。

 

と書いていて思い出しましたが、何となく「親父のように我慢強くキッチリした性格でない自分に同じことはできないかな」と幼少から考えていたフシはあります。

 

(2)自分で工夫する仕事のし方が好きだった

 

独立前、エンジニアをやっているときから、わりと様々なことに器用で、自分で工夫して仕事をするのが得意でした。

 

逆を言うと、チームのメンバーとなって、非効率な仕組みに我慢しながら仕事をするのがあまり好きではなかったです。チームワークはむしろとれる方だったので問題行動するわけではないですが、内心いつもモヤモヤしていました。

 

その意味では30歳近くになったくらいから、チームリーダーなどある程度裁量を持てるようになると、楽しい仕事もいくつか経験できましたが、残念ながらいつもそういう仕事だけではない。

 

そんななかで、いっそ独立して、営業活動から経理まで、様々なことを一通り体験したい、その中で自分の納得できる仕事の進め方で全部やってしまいたい、という働き方の理想イメージが常に頭にあったように思います。

 

(3)自分のペースで生きたいと思った

 

平日に買い物やレジャーに出かけることが(今でも)大好きです。世の中一般的なサラリーマンが働くなか、空いた場所や時間に余暇を楽しむことで特別感を感じ、心が満たされます。

 

一方で、仕事にノッてくると、土日休日も構わず、早朝深夜問わず仕事をしてしまいます。

 

仕事へのパワーのかけ方にムラがあるにも関わらず、毎日10時-19時に出社して仕事をこなさなくてはならないということに、漠然と「残念感」を感じていました。

 

人生という大きな時間軸だと、定年という仕組みで年寄りになって働けなくなるのも自分のペースに合ってないかもしれないと考えていました。

 

 

独立すれば、仕事に打ち込む期間と、バカンスを楽しむ時間をコントロールする「デキる自分」になれるんじゃないかと妄想していました。

 

 

(まとめ)

 

まとめると自分の働き方(生き方)に関する考え方とサラリーマンという働き方が合っていなかった、ということであって、特に起業して会社を大きくしようとか、社会にインパクトを与えよう、ということは考えていません(今でも)。

 

その意味では、世間の「ITフリーランス」というイメージに近いのではないかとこれを書きながら思ったりします笑